居宅訪問を伴う介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務においては、利用者や家族との距離が非常に近いのが特徴です。
また、二者間の密室化した関係性になりやすいため、依存や過度な期待がカスハラへと発展するリスクを孕んでいます。
基本シーン
利用者宅を訪問した際、「高い金を払っているんだから、これくらいやって当然だろう」と、契約時間を逸脱した業務を執拗に強要されることは少なくありません。
次の訪問案件があるからと断ると怒鳴られたり、ケアマネジャーに対して深夜・早朝を問わず執拗に電話をかけ、何時間も拘束したりするケースは非常に多く見られます。
また、家族からの「もっと親身になって寄り添うべき」という抽象的な要求がエスカレートし、介護方針への不当な介入や個人攻撃に繋がることも少なくありません。
専門家としての分析
臨床心理学的には、サービスを提供する側と受ける側が「お金を払っている方が上」という極端な上下関係に固定されたとき、利用者側に万能感が生まれやすくなります。
特に介護は生活全般に関わるため、顧客の「主観的な期待」が現実と乖離した際、そのギャップを客観的に捉えて処理することが難しくなり、激しい怒りとなって噴出します。
これは利用者側の「自己肯定感の低さ」を、スタッフを屈服させることで埋め合わせようとする心理的背景も影響しています。
対応のポイント:組織としての「盾」と物理的ディスタンス
このような事例においては、ケアマネ個人の努力に依存せず、組織全体で守る仕組み作りが不可欠です。
不当な要求には「私は組織の規定に基づいて行動することが役目であり、これ以上の対応はいたしかねます」と、主語を「組織」に置き換えて伝え、ケアマネ個人としての優しさを一度脇に置きましょう。
また、密室でのトラブルを防ぐため、複数人での訪問や、現場の判断で対応を打ち切ることができるような権限委譲を組織のルール化しておくことが、職員のレジリエンス(回復力)を育む土台となります。
Q&A
Q:利用者さんの家族に「前任者はやってくれた」と言われると、断るのが申し訳なく感じてしまいます。
A:その「真面目さ」が自分を追い詰めることもあります。
「ここまではやるが、ここからは断る」という自分なりのルールを決めておかれることを推奨します。
一部の理不尽な要求に忍従し続けることは、健全なケアの提供を阻害し、結果として自身の専門性を損なうことになります。
あなたの価値は心ない一言で決まるものではありません。自分を守るための距離感(ディスタンス)を、業務において不可欠な対人スキルのひとつとして習得していきましょう。
