職場の心理的安全性というと「安心できる雰囲気」や「ゆるやかなマネジメント」等と誤解されがちです。
しかし、心理的安全性とは、ありのままに過ごし、結果にこだわらない、ということではありません。
特に、認知行動療法(CBT)や行動科学の視点からとらえた心理的安全性とは、日々の行動や経験の積み重ねによって変化し、状況に適応しながら変わりゆくものと考えます。
ここからは、職場で起こりがちな事例を、心理的安全性を高めるためにどのように工夫すればよいのかを、CBTマネジメントの立場から考えてみます。
事例
ある営業チームの定例会議。
マネジャーのAさんが問いかけます。
「何か意見ある人、いませんか?」
沈黙が10秒ほど続きます。
若手のBさんが思い切って口を開きました。
「少し気になる点があって……」
するとAさんは、資料に目を落としたまま
「うん、まあそれは後でいいかな」
と会話を切り上げました。
それ以降、Bさんが会議で発言することはほとんどなくなりました。
専門家としての分析
行動科学では、行動の増減は「その後に何が起きたか」で決まります。
Bさんの発言は否定されてはいませんが、マネジメントに認められなかったことで強化もされていない。この「何も起きない結果」は、その後の発言行動を弱める方向に作用します。
心理的安全性を高めるには、発言や挑戦といった行動に対して、肯定的な結果が返ってくる予測が可能な環境を作りあげていくことなのです。
改善ポイント
- 発言には必ず反応を返す
- 内容より行動そのものを評価する
- 小さな行動を積極的に強化する
心理的安全性は「気持ち」ではなく、正の強化の履歴です。
今回のキーワード
「正の強化」
行動を増加させるための仕組みを「正の強化」と呼びます。
望ましい行動を維持するためには、相手の行動にプラスの評価を行い、都度わかりやすく伝えていくことが必要です。このときのプラスの評価のことを「強化子(きょうかし)」と呼び、上司や周囲が日頃から効果的な強化子を与えられるよう工夫して関わっていくことが効果的です。
