職場におけるフィードバックは、本来、部下の行動をより良い方向に導くためのものです。しかし現実には、「伝えたはずなのに行動が減った」「以前より消極的になった」というケースが少なくありません。
CBTの視点から考える場合、重要なのは内容の正しさではなく、その場で行動と結果の結びつきがどう経験されたかにあります。
事例
Fさんは、約束の期限を過ぎたものの、指示されていた資料を提出しました。
それを見たマネジャーは、ため息をついてこう言います。
「最近、ちょっとやる気が足りないんじゃない?」
Fさんは「すみません」と小さく答え、その場は終わりました。
数日後、急な顧客対応が入ったせいで別件に関する報告が遅れてしまった際、Fさんは同僚にこう漏らします。
「また嫌味を言われるだろうな…黙って帰っちゃおうかな」
結果として、Fさんの報告頻度は以前より下がり、上司とのコミュニケーションも減っていきました。
専門家としての分析
この場面で注目すべきなのは、フィードバックの内容そのものではありません。
「やる気が足りない」という言葉は、行動ではなく人格や内面に向けられた評価です。そのため、Fさんには、相手の要望、つまり「次に何を変えればいいのか」が分からないまま不快な結果だけが残りました。
行動科学では、行動とその直後に起こる結果の結びつきを行動随伴性と呼びます。
行動随伴性が明確な場合、人は「次はこうすればいい」と学習できます。しかし随伴性が曖昧になると、行動全体がリスクの高いものとして扱われ、回避や先延ばしが起こりやすくなります。
Fさんのケースでは、「報告する」という行動が、「否定的な評価をされる」「責められるかもしれない」という不確実な結果と結びつき、行動自体が抑制されていきました。
ポイント
- フィードバックは必ず行動に限定する
- 解釈や人格評価を混ぜない
- 次に取る行動を具体的に示す
心理的安全性を保つフィードバックとは、行動と結果の関係が分かりやすい関わりです。
今回のキーワード:行動随伴性
行動随伴性とは、ある行動の直後に生じた結果の結びつきのことです。随伴性が明確であれば行動は修正されやすく、曖昧であれば行動は抑制されやすくなります。
