職場での不安やストレスが高まると、「まずは気持ちを整えよう」「しっかり準備を整えてから動きだそう」と考えがちです。しかし認知行動療法の立場では、まず動いてみることで気持ちや状況を変えるという順序を重視します。この考え方が「行動活性化」です。
事例
新しい業務を任されたFさんは、試行錯誤しながらパソコンの前で手が止まっていました。
「これ、失敗したらなんて言われるだろう……」
マネジャーから「何か困ってる?」と声をかけられても、「大丈夫です」と答えるだけで、作業が進みません。
しかもそのうち「万一ミスをしたら評価が下がるかも」と思ってなかなか先に進まず、刻々と期限が近づいてきました。
専門家としての分析
Fさんの状態は、能力不足ではありません。不安の高まりによって、行動が止まっている状態です。
行動科学では、行動が減ると結果も得られず、その結果がさらに不安や回避を強めるという悪循環が生じると考えます。
行動活性化では、この循環を断つために、「気分がどうであれ、実行可能な行動を増やす」ことに焦点を当てます。重要なのは、行動の質や成果ではなく、行動そのものが起きたかどうかです。
Fさんにとって必要だったのは、「安心して考える時間」ではなく、「失敗してもすぐにやり直せるような小さな行動」を許容する環境でした。
ポイント
- 行動を極端に小さく設定する
- 成果ではなく着手を評価する
- 止まらず動き続けられる設計を作る
心理的安全性を高めていくには「失敗しないこと」に焦点を置くのではなく、トライアンドエラーを許し、行動が止まらないような環境を作りあげることが大切です。
今回のキーワード:行動活性化
行動活性化とは、不安や気分の改善を待たずに、行動を先に増やすことで状況を変えていくCBTの考え方です。小さな行動と結果の積み重ねが、回避や停滞を弱めていきます。
