ここまでは、認知行動療法(CBT)の視点から、職場における心理的安全性について検討してきました。
改めて確認したいのは、心理的安全性とは「安心感」や「ゆるやかな雰囲気」といった主観的な感覚ではなく、行動を起こし、それが維持されるような環境だということです。
発言する、質問する、提案する、相談する、挑戦する。
こうした心理的安全性を高め続けるような行動が、職場で維持されていくかどうか。
それは、それぞれの行動に対して、職場のメンバーが意図を理解し、受け入れられていったかの蓄積によって自ずと決まります。
専門家としての分析
行動科学の立場から見ると、職場の文化とは「繰り返し強化されてきた行動の集合体」です。
心理的安全性が高い職場では、発言や挑戦といった行動が、たとえ不完全であっても、何らかの肯定的な結果と結びついています。そのため、積極的な行動は維持され、徐々に増加していきます。
一方で心理的安全性が低い職場では、同じような行動でも、それに対する結果は一定していません。その場のメンバー、特にリーダー層の感情によって異なったり、その時点での忙しさなどによって左右されがちです。そのため心理的安全性を高めるような望ましい行動は減少し、沈黙や回避が合理的な選択として定着していきます。
気を付けたいのは、これらの結果が、意図的でなく起きているという点です。
「そんなつもりはなかった」「悪気はなかった」という言い訳は成り立ちません。
職場の心理的安全性は、つねに日々の関係性を通して、リアルに起きている行動、そして職場の反応としての結果によってのみ形成されていきます。
ポイント
- 心理的安全性を「雰囲気」ではなく「行動」で捉える
- 誰の、どんな行動が強化されているかを定期的に確認する
- 一貫した反応を組織として維持する
心理的安全性とは、個人的な心理状態ではなく、行動が止まらず、続いていく職場の構造そのものです。
行動が起き、ポジティブに結果を受け止める、その循環が維持されているか。
その視点を持つことが、心理的安全性を持続的に高めていける職場づくりの第一歩となります。
