多数決の功罪

私が授業を受け持っているひとつの大学の授業でグループワークをした時のことです。
グループごとに課題を出し、全体でひとつのアイディアをまとめるように伝えたときのこと。

私の想定では、たとえばAにするかBにするか、を決めるのであれば、
一連の話し合いのあとに
「Aがいいひと、手を挙げて」
「次に、Bがいいひと手を挙げて」
といった形の多数決をとるだろうと考えていました。

ところが学生たちが行ったのは、それとは違う行動でした。
リーダー役が
「AとB、どっちにする?せーの!」
と声をかけ、みんなで一斉に
「A!」「B!」
と口々に叫んだのです。

これで答えが一致すれば決定、となるわけですが、
なかなかそうは簡単に落ち着かない。

例えば5人グループであれば、
Aが4人、Bが1人なら成立しないわけです。
そしてもう一度、異なるアイディアを募って、また同じように採決する。
これを繰り返していました。

一見すると、効率悪そうだし、結局多数決と同じじゃない?
とも思えますが、決定的に違うのは発声時に
「多数派に流されない」
ということ。

AorBの多数決だと、AかBかを順に表明していくので、
あいまいな答えしか持っていないと、つい多数派のほうに引っ張られて
挙手しがち。
そうなると、迷っていた人がなんとなくAに流れ、結局「ちょっと多め」
あるいは推しが強めのメンバーの意見が通りがちになるわけです。

そもそも、「多数決は民主的な決定方法」という前提自体がどうなのか。
総意を決める際に、皆が等しく情報共有をしているとは限らないし、
バイアスの強い集団においては、望ましい結論に至ることは
むしろ少なくなりがちなのではないでしょうか。

日頃何気なく使っている決めかたのルールを再考する、そんなきっかけになりました。

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