第2回:職場ストレスを乗り切るマネジメントスキルとは(その2)

嶋田 洋徳 先生(早稲田大学人間科学学術院 教授)

臨床心理学,特に認知行動療法での第一人者である早稲田大学の嶋田洋徳先生へのインタビュー第二回目。今回は,職場ストレスへの対処方法などについて詳しくお聞きします。

―これまで多くの組織で研究や指導を行われてきた先生からご覧になって,ストレスの多い職場に共通した特徴はあるのでしょうか? 

嶋田:ストレス反応につながる職場のストレッサーには,それぞれ異なることが多いのですが,職場ストレスの原因として多くみられるのは,業務への要求度に比べて、仕事に対する個人の裁量度が低いということです。このような状況はストレス反応を引き起こしがちで,心身の健康に大きな影響を及ぼします。このことを踏まえれば,上司が仕事を「任せる」という時は、同時に業務に対する決定権もある程度は委任するという形をとること。万一トラブルが起きた際には周囲からの適切なサポートが得られるなどといったルールを設けることで、働く人の心理状態は改善される可能性が高まります。

―自分ひとりで,職場環境をすぐに変えていくのは簡単ではなさそうです。 職場ストレスにさらされてもメンタルを保つためのコツを教えてください。

嶋田:ストレッサーへの対処行動のことを「コーピング」と呼びます。職場でのストレスを感じた場合にも,なるべく早いタイミングで「自分に合った」コーピングを実行することが重要です。

また,自分に合ったコーピングの引き出しをなるべく多く持っておく、いわゆるコーピングレパートリーを増やしておくことも,心のバランスを保つコツといえるでしょう。例えば,気晴らしをしたり美味しいものを食べに行ったりという発散型のコーピングも効果的ですが,すぐにはそれが出来ないような時に機能するようなコーピングも用意しておくことが重要です。たとえば,いまの状況を別の面から見直して良い面を探す,とか,起こってしまったことは一旦あきらめる(手を離す),など,物事のとらえかたを変えてみるだけでも,ストレスの影響を軽減することは可能です。

―なるほど。いつでもどこでもコーピングできるような準備を整えておくことも大切なんですね。すぐに使えるストレスマネジメントの工夫を教えていただき,ありがとうございます。

(次回に続く)